夜の写本師【乾石智子】
おすすめ度100
これは・・・素晴らしい・・・。
魔導師が存在する世界を描いたハイ・ファンタジー。
情景描写が巧みで、山、海、丘、街と生き生きとした美しく広大な異世界が脳裏に広がる。
この世界に生きる人々のキャラクター造形もリアル。
誰もが個性的でそれぞれの人生がかいま見える細かい描写にしびれてしまう。
お気に入りは主人公の育て親の魔女エイリャ。
主人公:「大おば様!」
エイリャ:「おば様とおよび!」
このやりとりだけでご飯山盛り三杯いく自信があるが、当のおば様はすぐアレしてしまうので残念で仕方がなかった。
魔女エイリャ編が読みたい。
イルーシアという婆さんも良かった。
というところを考えると全体的に高齢者が良かった。
この世界には緻密な設定の魔術が登場する。
人形に対象の髪の毛を入れて針で指すとか、本を破いて燃やすとかで
どの魔術も儀式めいた内容。
薄っぺらいファンタジーの手のひらから爆炎を出すDBみたいな魔法は存在せず、
処女の涙と生後1週間のイモリの心臓を混ぜてそれを半年寝かせるような
とにかくめんどくさい手順が必要となっているのだが、
その理由は必ず説明されており、リアリティが半端ない。
このリアリティで魔法勝負をしちゃうわけなので、面白くないわけがない。
ストーリーは主人公が成長し復讐を果たす非常にわかりやすい内容。
古典文学のように美しい描写、生き生きとして伸びやかなキャラクター造形、そこにあるかのような世界設定、やたらと深い魔術体系・・・
大変心に残った。感動した!(涙)