ねじまき少女 上下【パオロ・バチカルピ (田中一江・金子浩 訳)】
おすすめ度20
よく知らないが4つも賞を取ってるので読んでみた。
舞台は未来のタイで、石油が底をつき、石炭が高価な時代。
化石燃料がなくなったらエネルギーをどうする・・・?
水力?風力?地熱?
いや、この世界は違う。
そう 「人力」!
また不便にもこの世界には電池がないっぽい。
ガソリンもなければ、電池もないでは車や船は動かない。
さあどうやって携帯用のエネルギーを確保するのか?
人類にはアレがある。ゾイド動かしてる奴・・・。
そう 「ゼンマイ」!
と、なんとこの世界では遺伝子工学で設計されたゾウさんが超スゴイゼンマイを巻いてそのエネルギーで工場やら車やらが動いているのだ。
世紀末にゼンマイ回して世の中を動かしているのは
北斗の拳の奴隷が木の車輪を回しているのと同じである。
この辺りの設定。非常に面白い。
面白いのだが・・・いかんせん話が難しい。。
ただでさえ設定が説明不足なのに、アジアの文化の予備知識前提の言い回しが多くて、完全に置いてけぼりにされる。
内容も主観の主人公格が3人いて感情移入しにくい。
西洋人と中国人とねじまきと呼ばれるアンドロイドストリッパー。
一応タイトルから察するにアンドロイドが話の対象なはずだが・・・よくわからん。
下巻の途中まで読んで得るものはないと踏みドロップした。
最後まで読むとなんかいいことがあったのかもしれないが、おっさんの余暇(通勤時間)は短いから無理だった。
バーチャルガールみたいなアンドロイドの逃避行といった単純な話のほうが難解な設定も生きてくると思うのだが。
無念。
夜の写本師【乾石智子】
おすすめ度100
これは・・・素晴らしい・・・。
魔導師が存在する世界を描いたハイ・ファンタジー。
情景描写が巧みで、山、海、丘、街と生き生きとした美しく広大な異世界が脳裏に広がる。
この世界に生きる人々のキャラクター造形もリアル。
誰もが個性的でそれぞれの人生がかいま見える細かい描写にしびれてしまう。
お気に入りは主人公の育て親の魔女エイリャ。
主人公:「大おば様!」
エイリャ:「おば様とおよび!」
このやりとりだけでご飯山盛り三杯いく自信があるが、当のおば様はすぐアレしてしまうので残念で仕方がなかった。
魔女エイリャ編が読みたい。
イルーシアという婆さんも良かった。
というところを考えると全体的に高齢者が良かった。
この世界には緻密な設定の魔術が登場する。
人形に対象の髪の毛を入れて針で指すとか、本を破いて燃やすとかで
どの魔術も儀式めいた内容。
薄っぺらいファンタジーの手のひらから爆炎を出すDBみたいな魔法は存在せず、
処女の涙と生後1週間のイモリの心臓を混ぜてそれを半年寝かせるような
とにかくめんどくさい手順が必要となっているのだが、
その理由は必ず説明されており、リアリティが半端ない。
このリアリティで魔法勝負をしちゃうわけなので、面白くないわけがない。
ストーリーは主人公が成長し復讐を果たす非常にわかりやすい内容。
古典文学のように美しい描写、生き生きとして伸びやかなキャラクター造形、そこにあるかのような世界設定、やたらと深い魔術体系・・・
大変心に残った。感動した!(涙)
銀河市民【ロバート・A・ハインライン】野田昌宏訳
おすすめ度60
久遠【グレッグ・ベア】が良かったので古めのSFを借りた。
人類が銀河の隅々まで移住しそれぞれが独特な文化、身体的特徴を持つまでに発展した時代の話。
サーゴンという惑星に奴隷として流れ着いた主人公。
競売にかけられた主人公を買ったのはなんと乞食。
この乞食が只者ではなく主人公に高度な教育を施す。
そののち、色々あって主人公は流れ流され地球にたどり着くのだが…
といった感じで
グレッグ・ベアのようなイっちゃった設定は出てこない。
代わりに読みやすさと勧善懲悪でド安定なストーリーがあって
例えるならSFテーマのRPGっぽい。
なんせ水戸黄門的な安心感があり、他の作品も読んで見ようと思った。
SOSの猿【伊坂幸太郎】
おすすめ度50
伊坂幸太郎はよく読む作家さんの一人だ。
大体は少しのファンタジーが現実(たいがいは仙台)に入り込み、事件が起きて、システムエンジニアが活躍する(ことが多い)。
沢山読むとだいぶワンパターンに思えてきたりもするのだが、ファンタジーと現実のバランスがちょうどよくてついつい手にとってしまう。
SOSの猿もまさにそのワンパターン。
エクソシスト経験のある優しすぎるシステムエンジニアがちょいちょいでてくる孫悟空こと斉天大聖にびっくりしながら事件を解決する!
突拍子もない設定に聞こえるが物語は至ってクールに進む。
斉天大聖が出てくるのだから破天荒な活躍を期待するものの派手さのない地味な展開。
一番面白いところなのだからもっと描いてほしい。
そこが不満だった。
久遠 下【グレッグ・ベア】
おすすめ度90
スケールがでかすぎるSF小説の下巻。
上巻と変わらず期待通りのスケール。
電脳ハッキング対決、異世界ファンタジー、ハワイの夜(ここが一番良かった)。
場面転換の予想が全くできない凄展開も健在。
ぶっ飛び過ぎてるので正直設定を理解するのでやっとだ。
それでも面白いのはこの人と翻訳家の技量の賜物だと思う。
感動した。
あとがきに「永劫」を先に読まないと感動を味わえないと書いてあり、軽いショックを受ける。
図書館に借りに行ったものの置いてなく。
orz